論点、争点、キーポイント(結審に向けて 8)
“「10・23通達」下の職務命令は憲法19条違反にあらず”
最高裁第二小法廷 不当判決
“「10・23通達」下の職務命令は憲法19条違反にあらず”
最高裁第二小法廷 不当判決
まず留意しなければならないのは、「上告理由書」によると上告人は憲法19・14・22条を争点とし、教育の自由(23・26条)の憲法判断を求めていないことである。従って判決は、主に職務命令が19条思想・良心の自由に違反するかどうかについて検討し、違反しないと判決した。
判決文の特徴は全33ページ中、「全員一致の意見」部分は8ページ余りで、その後は3人の裁判官それぞれの「補足意見」が延々と続くことである。その中心的論点は「間接的な制約」である。
判決はまず「起立斉唱行為は、一般的、客観的に見て・・慣例上の儀礼的な所作」であり「個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできない」とする。ここまでは「ピアノ判決」の枠内であるが、ここで持ち出したのが「間接的な制約」である。上告人の「起立斉唱を拒否する理由」に理解を示すポーズをとりながら結局「儀式的行事においては、生徒等への配慮を含め、教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図る」ための職務命令として「間接的な制約」も許容し得るとしている。重要なことは教育の自由を侵害している一律起立・斉唱の職務命令を「教育上の行事にふさわしい」等と決めつけていることである。
その後の3人の「補足意見」は言いたい放題である。「生徒の模範となるべき教員としての職務に抵触」(竹内)、「率先垂範的立場にある教員に日常の意識の中で自国のことに注意を向ける契機を与える行為を行わしめる」(須藤)、「起立斉唱行為の教育現場における意義等は十分に認められる」(千葉)。特に須藤「補足意見」は国家主義を高唱すると同時に「見るべき代替案あるいは拮抗する対案が提唱されていることもうかがわれない」とか「起立斉唱の形式、内容、進行方法、所要時間、頻度等を見ても、・・短時間で終了し、日を置かず反復されるようなものでもなく」等、事実に反することが勝手に述べられている。私は、「式次第から『国歌斉唱』を削除すること」を提案してきたし、「日の丸」は式の間中掲揚され、また一律起立・斉唱の強制・累積加重処分は毎年のことであり、そもそもこの強制は教育全体の統制と固くリンクされている。
「全員一致の意見」は、基本的には“より厳密に検討した結果、職務命令は合憲であること”を打ち出し、「補足意見」は都教委を牽制している面はあるが、「間接的な制約」をも許容し職務命令合憲を補強している。
今後、まだ憲法判断が出されていない教育の自由(23・26条)への主張を強化したい。
次回口頭弁論(結審)7/11(月)13:30~ 527号
最終準備書面の提出・原告本人の最終陳述
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